2008年04月13日

おふくろの味

私にとって、おふくろの味で一番印象深いのはアク巻きと呼ばれる
南九州独特のチマキです。

毎年、5月の節句に大きな鋳物のなべで、もくもくと作っていました。
もち米をアク (アク巻き専用の木の灰に水を浸すと黄色い液体になり上澄みだけを使う)
に浸けると、黄色いもち米になりますそれを竹皮に包み、米わらでしばって茹でます。

出来上がって竹皮をむくと、美しい琥珀色の弾力のある香り高いちまきになります。
好みで、醤油をつけたり砂糖やきな粉などつけて食べていましたが、
特に、幼いころはにおいしいとは思いませんでした。しかし大人になって何回か
送ってもらっているうちに、個人的にもち米料理では最高に美味いと思うように
なりました。
色、素朴な味わい、歯応え等、とても言葉では言い表せない程の絶品です。

    

調理人となってから、何度か挑戦しましたが、灰アクの種類が違うのか
もち米が違うのか解りませんが、本来の物がいまだに成功していません。
おふくろにレシピを何回聞いてやってもうまく出来ません。

たまに、食べたくなりますが最近はおふくろも年をとり作っていません。
残念です。  

Posted by 料理長 at 15:07Comments(3)TrackBack(0)

2008年04月12日

黒潮

今年もまたかつをがやって来ました。
毎年、かつをは遠く南洋から黒潮に乗って成長しながら北上します。
黒潮と言えば、私が生まれた種子島では、黒潮の正体をはっきりと肉眼で確認できます。
3月の終りから4月にかけて、特に朝方小高い丘から海を見下ろすと濃紺の黒っぽい筋が
海に出来ていてなんとも不思議な光景です。農家では黒潮を見てから田植えを始めたり、
一年の作付けなどの合図として利用し、昔から島の人々にとって貴重で大変優秀な自然のお師匠さんです。

長野県などで山の残雪の形で判断するのとよく似ていますね。
ところ変わればいろいろです。

    
 種子島の海 


その帯状の黒潮からは湯気のような、もやのような白っぽいものが立っていて、聞くところによると、
周囲の海水より3度程温度が高いそうです。そしてそれは決して混ざり合うことはなく、延々と
ながーい帯を作り続けます。

もともと黒潮は東シナ海(日本海側)を北上してくるのですが、九州最南端の佐多岬と
種子島の間の海峡を、なぜか横切り太平洋側に貫けます。
その為、特に種子島は非常に近くで観ることができるようです。  

Posted by 料理長 at 13:17Comments(1)TrackBack(0)

2008年04月03日

新人

4月に入り、新入学・新入社員の季節です。
30数年前、私も新人調理人としてある会社に入社しました。かなり古い話で恐縮ですが、
その当時、テレビドラマでショーケン主演の“前略おふくろ様“という番組が放送されておりました。
田舎から上京してきた新人板前のサブちゃんが、板場の世界にとまどいながらも修業して一人前の板前になっていくという物語で、なんとなく自分の境遇と重なる部分もありよく見ていたものです。
ショーケンこと萩原健一は、当時の若者に絶大なる人気を博しておりました。

       

そんな頃、勤めていた割烹のお店での事です。
その店はあまり大きい店ではありませんでしたが、地域ではそれなりに名の通ったお店でした。
その店で一番下の小僧さんで私は働いていました。当時の世の中はいけいけで日本の絶頂期
少し前あたりです。
お店は毎日忙しく、仕込みから皿洗い、庭の手入れ水撒き、魚の水槽掃除、店や先輩の車の
洗車までやっていました。

そんなある日、表で水まきをしていると、高級外車に乗った常連の社長さんが女性のお客さんと
来店されました。慌てて店に入ると、もうすでに調理場には緊張感が漂っています。
このお客さんなかなな味にうるさい上に、眼光鋭く些細なことを見逃してはくれません。
先輩たちも皆が苦手にしていました、私もその中の一人でした。

一通り食されてからカウター越しに おい、にーちゃんラーメン食べたいけどあるか?
なんとな~くいやな予感がしたので、顔を上げるとそのするどい目は私を見ています。
えッ・・どうしてオレなの? 先輩に言えばいいのに・・・
しかもうちは割烹の店なのに、ラーメンなんかあるわけないのに・・・・・
頭の中をグルグルと回ります。

とっさに今日のまかない(本日は私が当番)で食べる予定だった九州の田舎から送って
もらったちゃんぽんがあったのを思い出し、ちゃ、ちゃんぽんならあります。

おぅ 何でもいいからつくってくれや・・はい、かしこまりました。
19歳の駆け出しだった私にとって、はじめてお客様の為にすべて自分1人でつくる記念すべき
初オーダーがなんとちゃんぽんです。緊張しすぎて必死だったことしか記憶がありません。

なかなかうまいじゃないか・・ おいしいねー(女性) 出身はどこなの? 
種子島です・・えッ ・・・鹿児島県です。
そうか、随分遠いところから来てるなー。するどい目が一瞬優しい目にみえました。
がんばれよ! はい、ありがとうございます。

その後、その社長さんは顔を出す度に私に声をかけてくれるようになり、未熟な
私の調理技術にいろいろお客としての意見を言って頂きました。
そして、最後にはだいたい決まってちゃんぽんでした。
そのお陰で、先輩たちからもちゃんぽんの時だけは一目おかれるようになりました。
当然の事ながら、冷蔵庫にはちゃんぽんの買い置きが常においてありました。

たかが、ちゃんぽんとばかにしてはいけません!私の原点でした。

           

Posted by 料理長 at 19:56Comments(0)TrackBack(0)